act.23 あとがき


 高村咲、というキャラクターに仮託して色々とぶちまけてもらってから、一年以上経ってしまいました。
 今、また鬱屈した感情を溜め込みつつある雨宮ですが、この『あたしがわたしになる前に』を書き終えた後暫くは、かなりすっきりした気分でいました。
 多分、これをここまで読んでくれた人は、すっきりなんて気分とは程遠い感情・感想を持っていることでしょう。「だから何?」とおっしゃりたい方が多いのではないでしょうか。
 そこが最大の失敗でした。自分にしか分からない事、を決して読者に理解されないように書いたのが。途中で気付いてはいましたが、まあいいかと。筆が止まらないし。すっきりできそうだし。
 こうして出来上がったのが、この不恰好な物語です。


▼タイトルについて
 このタイトルを冠するお話は最初、全く違う物でした。ここに置いてある「魚づまり」を書いた辺りに考えていた別の短篇で、「優等生の女の子が万引きをした後に語り始めた内容」を描いた物でした。まあ万引き、という事で少し下敷きにはなっているのですが。

▼佐藤葵と鈴木茜さん
 初めは佐藤しか登場しないはずでした。しかも佐藤に名前などありませんでした。ただの佐藤で、ちょっと嫌なやつでした。凡百の一人と言うか、その他大勢的な。だから日本で一番多い苗字をあてて、存在を記号化?しました。
 後に万引きした子の名前を出したい、と思い立ち、佐藤に対して二番目に多い「鈴木」をあてがいました。
 主人公が「高ムラサキ」なので、青と赤を思わせる名前を付けたのは、今の筋立てになってから。
 作中では「赤」は肉体的な死を、「青」は精神的な死(佐藤死んでねえ)を象徴するように書こうと思っていましたが、グダりました。ごらんの通りです。

▼白石博美と黒川朋子
 この二人はweb版オンリーのキャラで、投稿版には登場しません。もっと掘り下げればよかった。
 白石と兄貴の関係は外伝でも書こうかと思いましたが、どっちでもよくなったのでパス。
 クロは最初期のプロットならもっと出番があったんですが。死ぬけど。

▼兄貴
 名前がありますが、墓場まで持って行……くかどうかは分からない。
 この人が本当は死ぬ筈でした。なんと言うか、最初はもっとステレオタイプな「ケータイ小説」みたいなストーリーでした。(どういうのが皆さんの『ステレオタイプ』かは知りませんが)

▼緑さん
 本当は不倫なんてしてないんじゃないかな、この人。世帯主の病院の看護婦さんでした。
 割と理想のお母さんです。個人的には。

▼世帯主
 外科医の高村正彦先生。作中で描写が殆どないのは、それだけ咲と接点が薄いから。忙しいので。お医者さん最近足りないし、いらいらしてたんでしょう。あと、薬……?いやいや。
 「あたわた」がヤンデレ小説だという根拠は、ひとえにこの人の存在の為です。

▼2004年
 何故かアテネオリンピックの年になってます。仕様です。が、この年に書いたわけではありません。2006年に書きました。

▼16歳
 高二なら17歳ですが、高村咲は遅生まれなのでそんな感覚ありません。よって16の夏。

▼ホントのプロット
 ・二重人格っぽい感じの高村。厳密にはそうではなくて、あくまで「っぽい」だけ。
 ・日常の中、表向きいい子の「わたし」と破滅的な本性?「あたし」を作り出していた。
 ・万引きゲーム(本編参照)が他人に見られる。
 ・佐藤(笑)らが、それを種に恐喝的なことをされる。
 ・「わたし」の弱さに呆れ、「あたし」が対抗。
 ・生意気言ってんじゃないよ、と廃工場的なところに呼び出される高村。
 ・心の中に今まで引っ込んでたせいで、現実に対処できない「あたし」
 ・ボコられる高村。男もいて、色々(察して)される。
 ・「あたし」も「わたし」も壊れ、第三の人格「オレ」が登場。
 ・「オレ」は何故か異常に強い。身体能力も急上昇。
 ・男を打ち殺し、いじめっ子グループ(っていうか不良グループ?)を追い散らす。
 ・朝もやの中、最初に会った着ぐるみを刺すと、中身が兄貴。
 ・「オレ」から本当の「高村咲」に目覚め、おしまい。

 没の理由は「大変そう」「最後の意味が分からない」「不良グループてww」の三つ。

▼高村咲
 「あたしがわたしになる前に」を最後まで読んでくれたあなた!
 あなたがもし男性ならば、彼女の婿候補の一人です。


 何だこのあとがき……。特に最後。


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