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後始末 その1:俺と鹿島と科川と



「そういやさあ……。」
 鹿島が何かを思い出したようにポツリと口を開く。
「なんだよ?」
 テスト最終日とオフが珍しく重なった今日、俺は久しぶりに鹿島の家に遊びに来ていた。
さっきまでハンドボールゲーム『ウィニングセブン』をやっていた。
「科川正一っていただろ?」
「ああ。」
 確かサウザンズ学園出身のお笑い芸人だ。ちょっと前に流行った。 「最近見ないよな。」
「やっぱ一時期のブームだったんだろ?」
 シケたギャグなんて長くはウケないのだ。昔っからあのネタばっかりだし。
「ちょっとTVつけようぜ。」
「ん……。」
 別に今出ているかもなんて思ったわけじゃない。
ただ、PSが繋がったまま黒い画面を映すTVが何となく物悲しかっただけなのだ。
 鹿島がリモコンの入力切替を押すと丁度昼のワイドショーをやっていた。
『では、次はこのコーナー「あの人は今……!?」!!!』
 昼のワイドショーでそんな企画とは珍しい。それだけ芸能界も浮き沈みが激しいのだろうか?
『今日の「あの人」は、“げっちゅう”で一世を風靡した……』
 え!?
「科川正一……」
 何てピンポイントな……。これは俺らが思い出す頃にこの企画を持ってきたプロデューサーを
褒める所だろうか?
『げっちゅう!!科川です!!』
「おお、懐かしい……。」
「早速レトロ扱いかよ……。」
 一時期はウザイぐらいに出ていて、もういいってと言う感じだったのに。
『科川さん、何か新ネタはありますか?』
 うわっ!?速攻できつい質問来たよ……。
 科川はデビューして十数年、げっちゅうだけで来たのに……。
 たまに思いついてもパクりだし……。
 恐らくそれを知っていての質問だろう。
 だが当の本人はよくぞ聞いてくれたと言う顔になった。
『まあ、任せて。』
 あの時と同じようなでかい態度で答える。こういう態度が評論家連中の心証を悪くしたせいで
消えたのではないかと言う話を何処かで聞いた事がある。
『では、お願します……。』
 サッとインタビューアーが画面から消え、中央に科川だけが残る。
『手を挙げろ!!』
 突然何処からともなく玩具のマシンガンを取り出して画面に向けた。
『ハイ!!』
 そして自分がバッと手を挙げてマシンガンを下に落とす。
 …………いやあ、何だかなあ…。
『い、今のが……』
 インタビューアーもあきれ返って首を振っている。
 だが、当の本人は場の雰囲気など知ってか知らずか得意満面で、
『あれ?分かりにくかった?あれは、手を挙げろと言っておいて、自分が挙げちゃうとこに
 面白さがあるんだよなあ。』
「それぐらい見りゃ分かるわー!!!」
「と言うか、自分で解説してりゃ世話ないな……。」
 俺と鹿島はほぼ同時に感想を述べて恐らく彼渾身のギャグを一蹴した。
 科川正一、彼が返り咲く事は二度とないかもしれない……。いや、ないだろう。

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