後始末 その2:林と黒部と拭い去れない疑惑



「おう、黒部っち。」
 学校前のコンビニから出た所で黒部北斗は声をかけられた。
振り向くと、去年のクラスメイト林時緒が立っていた。
「それ、買ったのか?」
 と林は黒部の右手に握られたペットボトルを指す。
「ああ。」
 それは黒部が愛飲しているスポーツドリンクだった。
商品名を『すっぽりアミノさん』と言う。
「それって変な名前だよな。」
「でも美味しいから。それにあながち変な名前とは言えないみたいだ。」
 確かに変な名前だ。だが、この名前の意味を黒部は知っていた。
「何でも、『すっぽり』って言うのは『スポーツドリンク』の略らしい。」
「へえー。でも変な略し方だな。じゃ『アミノさん』は『アミノ酸』?」
 音で言えば同じようだが、アクセントが違うので黒部は林の言わんとする所を悟った。
「ああ、最近の流行りだしな。」
「はは、流行なら何でも取り入れるってわけか。何処の会社?大塚?」
「え?」
 そう言えば、気にした事がなかった。ボトルを回転させてラベルを見てみる。
「変な名前と言えば、塩見って鏑木さんに変な渾名付けてたんだって。カブぴょんとかって。」
「へえー。」
 答えながら発売元の表示を探す。あった。そこには……
「サウザンズ飲料……。」
「え?」
 二人の間の時が止まる。
 サウザンズ……二人が通うのはサウザンズ学園……そして去年の秋一緒に戦ったのは……。
「サウザンズ・カーク……。」
 そしてその組織の首領の名は……塩見憂。歴戦の戦士鏑木に『カブぴょん』などと渾名をつけた……。
「はは…。」
「まさかな……。」
 このネーミングは塩見の物か否か、それよりサウザンス飲料とは、何と言う多角経営なんだ……。
 恐るべしはサウザンズグループ……。

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