後始末 その3:塩見と深井と鐘本の趣味



「深井君、鐘本君は?」
「今日は釣りの日だから、会議は欠席だそうだ。」
 メニアニマ壊滅後、彼ら千鶴の面々はさしたる脅威もなく、暇だった。
と言う訳で、毎週の定例会議もやる事がない。だから欠員がいても大して問題ないのだ。
「鐘本君、釣り好きなんだ。」
「ああ、知らなかったのか?今日は日本海の方に行っているらしい。」
「日本海で鐘本君が釣りと言うと……」

   ドッパーンと波しぶきが散る、荒れた冬の日本海。
 それを見下ろす岩壁に、自分の身長程もある大きな釣竿を持った鐘本が立つ。
『しゃあっ!!!』
 鐘本がその釣竿を勢いよく荒れた海に振り降ろす。
 暫くしてアタリが来る。強い引きだ。負けずに鐘本も力を込める。
『うりあぁぁぁぁ!!!!!』
 ザッパーと姿を現す巨大魚。体長は3メートルを優に越している。
 それが引き上げられて宙を舞う。
『はっ!!』
 天高く上げられた巨大魚目掛けて鐘本がジャンプ。そしてその腹に一撃――
『っしゃああああぁぁぁぁ!!!!!』
 バゴーンと言う音と共に四散する巨大魚。
 散らばる肉片を背後に鐘本が岩壁に着地し、悲しげに一言
『また、釣れなかった……。』

「釣り方が違うわ、鐘本君!!」
 いやいやと言うように首を振って叫ぶ塩見に深井は一言、
「どんな想像をしたかは知らないが、普通に釣りしてると思うぞ。」

目次に戻る