その4:塩見と深井と小黒の趣味



「そう言えば智慧ちゃんは?」
「今日は爆破の日だから、会議は欠席だそうだ……。」
 メニアニマ壊滅後、彼ら千鶴の面々はさしたる脅威もなく、暇だった。
と言う訳で、毎週の定例会議もやる事がない。だから欠員がいても大して問題ないのだ。
「智慧ちゃん、定期的に爆破してるんだ。」
「ああ、知らなかったのか?今日は日本海の方に行っているらしい。」
「日本海って事は鐘本君と同じとこじゃん!」

 ドッパーンと波しぶきが散る、荒れた冬の日本海。
 それを見下ろす岩壁に、自分の身長程もある大きな釣竿を持った鐘本が立つ。
『しゃあっ!!!』
 鐘本がその釣竿を勢いよく荒れた海に振り降ろす。
 暫くしてアタリが来る。強い引きだ。負けずに鐘本も力を込める。
『うりあぁぁぁぁ!!!!!』
 ザッパーと姿を現す巨大魚。体長は3メートルを優に越している。
 それが引き上げられて宙を舞う。
『はっ!!』
 天高く上げられた巨大魚目掛けて鐘本がジャンプ。そしてその腹に一撃――
くわえようとしたその時、突然飛んでくる手榴弾。
『うわっ!?』
 鐘本はすんでのところでかわし、代わりにバゴーンと言う音と共に四散する巨大魚。
 散らばる肉片を背後に鐘本が岩壁に着地。そこに手榴弾の主と思しき小黒が現れ、一言。
『また、釣れなかったね。』
『誰のせいだよ!?』

「邪魔しちゃダメよ智慧ちゃん!!」
「どんな想像をしたかは知らないが、別の所に行ってると思うぞ。」
 だが、次の日に自分の想像の甘さを、深井は思い知らされる事になる。

 次の日の朝、いつものように塩見は学校の門をくぐった。
その背後には護衛も兼ねた深井も控えていた。
「ふ、深井……。」
 後ろから地の底から響くような声が自分を呼んでいる。振り向くと体中包帯だらけの鐘本が
立っていた。
「どうした鐘本!?」
 ただならぬ状況に思わず声が大きくなる。
「お、小黒が……僕の釣りを……。」
 その一言を残し、鐘本は意識を失って前のめりに倒れた。
「鐘本ーッ!!!」
 深井の絶叫が朝の学園に響き渡った。

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