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第十話 僕らは秋夜に午前様



 白衣の男は後ろに控えた助手らしき小柄な男と共に九渡の隣の席に座った。
 と、言う事は『ローマカトリック教会の武装集団』側の人間らしい。
「紹介しよう。」
 鏑木が白衣の男を指して言う。
「我が組織の技術者の丸山大輝博士だ。」
 丸山が立って会釈する。律儀な人だ。
「じゃあ、そちらは……?」
 小柄な方を指して黒部が鏑木に問う。
「彼は私の助手で、外山剛君です。鏑木さんと入れ違いでセフィロトに入ったから、面識は……」
「ないな。」
 丸山に紹介されても、彼はギコチなく会釈一つするだけだった。無愛想な人だ。
「さて、ちょっと専門的な話になるけど、いいかな?」
 自己紹介も終わり、丸山は辺りを見回した。
 皆が肯いたので、慌てて僕もそうした。

 その金属、言っちゃうとAg、つまり銀なんだ。
 何故だか知らないが、彼らの体にはこれが有害でね、体組織が崩壊してしまうんだ。
 恐らくは不安定な細胞に……ってこれは専門的過ぎたね。
 つまり、これを利用して銃弾の先を銀でコーティングすれば彼らにも通じるというわけだよ。

「嘗て、タッキーオとの戦いに於いては、この技術がものを言ったわけだ。」
 鏑木が話を繋ぐ。
「専門的なことはよく分かりませんが……。」
 おずおずといった感じで鹿島が口を開いた。
「その対策は、相手は取っているのでは……。」
「それはないと思うよ。」
 丸山が大丈夫、というような口調で言う。
「銀に弱いというのは、連中にとっては致命的だけれども、それを除く事は構造上出来ないらしいんだ。」
「それに、まだそれが弱点だという事は今日立証された。」
 鏑木が九渡を促し、彼は今日僕が巻き込まれた戦いについて話す。
「つまり、このような兵器なら有効打を与えることが出来るんだ。外山君?」
 言われて外山は立ち上がると部屋の外から金属製の箱を大量にキャリアに乗せて運んできた。
「これが本国から持ってきた武器だ。重火器系だけでなく、色々な種類があるから好きな物を使ってくれ。」
「今日はこの辺の数が足りなかったから苦戦を強いられたのだ。」
 そうか、九渡があの時如意珠で撃ったのは、銀の飛礫だったんだ。
数が足りなかったから出し惜しみをしていたのだろう。
   丸山と鏑木が説明している間に、外山は手早くテーブルの上に箱を載せ始めた。
「ちょっと待って下さい!」
 鹿島が鏑木の方に向き直り言った。
「俺達も、戦うんですか?」
 そう言えばそうだ。僕らは戦闘員でもなんでもない。と言うかここにいるのが不思議なくらいだ。
戦わせないのが普通だろう。それなのに
「無論だ。ここまで話を聞いたのだからな。」
 と言い放った。
「そんな、素人だぜ俺ら……。」
 僕の言葉に鏑木は不適に笑って
「誰でも最初は素人だ。」
 ……ダメだ、話が通じない。
「もしもの時は俺たちがフォローしてやるから、な。」
 と深井に肩を叩かれて陰鬱な気分になった。
 鹿島の方を見ると、彼もまた苦笑いを浮かべている。
そう言えばこいつの親父は警察関係者ではなかったか。
「じゃあ、武器を選んでもらおうか。」
 もう、選ぶしかないらしい。

「ぅちこれぇ!」
 小黒智恵美が真っ先に飛びついたのは大きな金属の筒だった。
『007 ゴールデンアイ』や『パーフェクトダーク』なんかのシューティングゲームでよく見る
ロケットランチャーという代物ではないだろうか……。
(あ、扱えるのかあの子に?)
 そう思っていると、彼女が僕の方をじっと見て
「石野きゅん、ぅちのことバカにしてるぅ?」と言った。
「いや、そういうわけじゃ……。」
「ぅつよ。」と彼女は砲身をこちらに向ける。何故か本気で撃ちそうな気がした。
「止めてくれ、ここが壊れる。」
 鏑木が横から口を挟む。

「ボクはこれかな。」
 そう言って鐘本が取り上げたのは指の部分が銀色のガントレットだった。
「それは格闘戦向けだね。相当力がないと扱えないよ。」
 丸山が注釈をつける。だが鐘本はそれを軽々持ち上げた。
「おお!」
「ちょうどいい。」
 そう言って鐘本がテーブルに置く。ドスッと音がした。
 それを見た林が横からそれを持ち上げようとして
「重ッ!!?」
 持ち上がらなかった。

「俺はこの刀がいい。」
 そう言って黒部は刃の部分が銀で出来ているという刀を取り上げた。
 鞘から抜き放ち、僕なんかは見るだけでドキドキする様な刃の部分を見つめる。
「ふっふっふ、生体兵器共め魚捌き抜刀術の力、見せてくれるわ!!」
 違う!キャラがいつもと違う!もっと落ち着いているだろう!!
 刃物を持つと性格が変わるのだろうか。恐い。率直に恐い。

 結局僕は何か見かけは普通の拳銃。
 鹿島も僕と同じような銃。だけど装弾数が違うようだ。
 林は口径の大きいマグナム銃。威力も高そうだ。その分反動がすごそうだけれど。
 黒部はあの刀。(魚捌きって何?そう言えば家が寿司屋だ黒部……。)
 九渡は何かよく分からない物を腕に取り付けていた。
 鏑木は散弾銃っぽい物。初めから自分用に頼んでいたみたいだ。
 深井も僕と同じ拳銃。彼は普段は実戦には加わらないらしい。参謀という奴か。
 鐘本はあのクソ重いガントレット。よく両手に付けられるよ……。
 小黒さんはロケットランチャー。鐘本が青ざめていたけれど、何かあるのだろうか。

 塩見は鹿島と同じような銃。装弾数が多い方が安心みたいな事を言っていた。
「いいか」
 鏑木が武器を選び終わった僕ら四人の前に来て言った。
「それで倒そうと思うなよ。あくまで護身用だ、いいな?」
 僕らは強く肯いた。よかった。さっきの素人云々の話は冗談だったみたいだ。
大体戦うなんてそんなの御免だしね。黒部はその気だけれど。

「これで全員に行き渡ったね?」
 丸山の問いに肯くのを見て、鏑木が会の終了を告げる。
 それにしても、今から帰ったら確実に午前様だ。ここが何処かは分からないけど。
よっぽど心配そうな顔をしていたのだろう、塩見が僕らに話しかけてきた。
「大丈夫よ、家には学校の緊急合宿だって言ってあるから。」
 ……組織の権限って奴か。何か、頭が痛い。  その時僕は、何故かなんだかとても大きなドッキリにはめられている様な気がした。

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