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第ニ話 僕らは秋空の下尾行した



 二人は親しげに話しながらゆっくりと歩き、学校を出て駅へまっすぐ向かっていった。
 僕らもその後をゆっくりこっそり着いて行く。
 ここで少し、僕らの学校の事を紹介しておこう。

  この学校『サウザンズ学園』は、中学から高校、大学へとほぼエスカレーター式に
上がっていける、とてもお得な学校なのだ。
 お得、と言っても私立の常で授業料が馬鹿に高いが。
 生徒の構成としては、中学からいる人が大多数で、高校からの人は100人ほどだ。
 因みに、僕と鹿島と黒部、それから井城は中学から、林と長崎さんは高校からだ。
 一部の人の間で、中学からいるのはアホの集団で、高校から入った人はまあまあマシ。
大学からが一番いい、なんて言われているけれど、そんな事を言っている人達こそ本当に
馬鹿だと思う。
 中学から入ったって、ちゃんと勉強している奴はしているし、何より集団を同じ価値として
縛り付けて考えるのは、とても横暴だ。
 僕達は、それぞれの思想と価値観の下で生きている。
命の上では同じだけれど、一人一人が大きく違う人間なんだ。

    ………話が脱線してしまった。
 兎に角、僕らは二人の後について追いかけた。
 二人はそれに気付かず、手なんか握ったりして歩いている。
「あいつらいちゃつきやがって……。」
「先を越されて悔しいのか?」
 鹿島がまた、妙な事を言い出す。
「何の先だよ?」
 鹿島は少し考えてからこう言った。
「……長崎さん?」
「はあ?」
「いや、コクるのを先越された……。」
「んでだよっ!!」
 こいつはいつもこうだ。まったく……。
「あ!」
 突然、林が声を上げる。
「どうした?」
「あれ、塩見さんじゃない?」
 林の指した方を見ると、そこには確かにうちのクラスの塩見憂がいた。
 物陰から様子を伺っている。
 こちらからは丸見えだが、恐らく様子を見られている側からは死角になるのだろう。
 一体、誰の様子を見ているんだ?
「……あの位置だと、あの二人から死角になるな………。」
「あ、確かに……。」
「じゃあ、俺達と同じで……。」
 僕の言葉に黒部がうなずく。
「多分、そうだろう。」
「やっぱり皆、興味あるんだな……。」

 その夜、僕は嫌味も込めて井城にメールしてみた。
『長崎さんと付き合ってんの?』と。
 アイツからの返事は、『誰から聞いた?』だった。
 それはつまり、認めたということだ。
 これはちょっと……
「面白くなってきた……。」

「面白くない事になった。」
 開口一番、不機嫌気に彼は言った。
「私ら以外の追跡者の事?」
 その向かいに座った少女は、分かっていながら敢て尋ねた。
「そうだ。」
 それ以外に何がある、と言い彼はさらに続けた。
「あいつらはこれを只の色恋沙汰としか思っていない。この出来事が世界に与える影響が、
 どれほどの物かも……。」
「でも、知らないんならいいんじゃない?」
 深刻な男とは対照的に、彼女は気楽そうに言った。
「知らないから厄介なのだ。」
 男は思わず語気を強めた。
「このままでは、あいつらは必ずこの事に首を突っ込む。そうなってはミッションに支障を
 きたすのは明らかだ。」
 その言葉で少女の表情が一変した。
「……トーシロに首突っ込まれたくらいで、あんたらは仕事が出来ないの?」
 男は少し黙り、やがてこう言った。
「普通なら」
「え?」
「普通の仕事なら、ここまで神経質にならない。」
「今回はまともじゃないって事?」
 彼女の問いに男は肯き、その報告の為もあって来た、とも言った。
「例の兵器が投入される恐れがある。」
「どの『例の兵器』よ?」
 男の答える口調は重く、それは『例の兵器』が齎す物がどれほど重大かを示していた。
生体兵器バイオウェポン……。」

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